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GAKU NAKAGAWA中川 学

Desing boom

デザイン業界のオンラインマガジンで、最も注目されているメディアの一つ
「Desing boom」に中川学のロングインタビューが掲載されております。

http://www.designboom.com/art/illustrator-gaku-nakagawa-interview-08-07-2015/

以下、和訳です。

 

●アーティスト・イラストレーターになったきっかけは?

こどもの頃は漫画家になりたいと思っていました。けれど、大学在学中に挫折をし
広告会社に就職して、コピーライター、デザイナーを経て、6年間アートディレクターを経験しました。
その間、イラストレーターにコンセプトを説明して広告用のビジュアルを作ってもらう仕事をする中で、
小さなカットイラストレーションを自分でも描くようになり、だんだんその割合が大きくなりました。
30歳の時に子どもが生まれたのをきっかけに、その広告会社のブレーンイラストレーターとして独立しました。

 

●作品はどのようなアプローチで製作していますか?

まずは、そのイラストレーションが必要とされるコンセプトを大切にしています。
何を誰に伝えるための絵なのか、そのために最善のシチュエーション、構図、色合い、など考えます。
思いつくまでエンピツで簡単なラフスケッチをらくがきのように沢山描きます。
お風呂に入っている時ににふと思き、出てすぐにメモ用紙に描き留めることもよくあります。
下描きはあまり細かくせず、パソコン上で描きながらどんどん膨らませていきます。
ここからはコンセプトなど忘れて、絵を描くことを楽しみます。
着地点を想定せず描くので、どんな絵が出てくるのか自分でも分かりません。
パソコンの良いところは、その場で色んな色や線の太さ、パーツの大きさなどを次々試していけるところです。
思わぬ美しい絵になっていくどきどきした感じが良い絵を生むように思います。

 

●ご自身の考え方にもっとも影響を与えているもの、人はなんですか?

浮世絵や絵巻物など昔の日本の絵画、戦前の古い広告図案や本の挿絵、
西洋の印象派や、アールヌーボーやアールデコ、版画で作られたポスター、
子どもの頃に親しんだ、日本のマンガやアニメーション、
その他、今まで見たあらゆる絵や図案に影響を受けています。
影響を受けた人は、俵屋宗達、伊藤若冲、葛飾北斎、小村雪岱、河野鷹志、柳宗悦、
ゴッホ、ロートレック、クリムト、ビアズリー、エルテ、柳原良平、和田誠、永井博、
水木しげる、鴨川つばめ、大友克洋、高野文子、宮崎駿、なかむらたかし、小林治、
泉鏡花、司馬遼太郎、中沢新一、円谷英二、服部良一、細野晴臣、大滝泳一、
ゴータマシッダルタ、法然源空、西山証空、まだまだいますが書ききれません。

 

●ご自身のアート、イラストレーションにて、チャレンジをしたプロジェクトは?

イラストレーションの転機となったプロジェクトはいくつかあります。
2005年に開催した「京都慕情」展。ヴィジョントラックからの提案で企画した個展でしたが、
adobe illustratorという没個性な線しかひけないソフトを用いて、
個性的な風景を描くとはどういう事か深く考えることになりました。
その試みは、2007年、ロンドンのmonocleからの依頼で描いた「理想的な街」で結実し、
街並のようなものでも、個性的に描ける糸口を見い出す事ができました。
さらに2008年の東京での初個展「龍潭譚」展にて
昔から好きだった日本の古い時代の物語のビジュアル化に挑戦し、
illustratorを用いて浮世絵のような有機的で個性的な線を生み出す方法を見つけました。
同時期に取り組んだ2冊のオリジナル絵本「Happy Birthday Mr.B!」と「1年に1度のアイスクリーム」は
逆に西洋風のポップな絵柄を追求し、次第に「和」と「ポップ」を融合する方向を模索するようになりました。

 

●一番の強みの技術は?また、その技術を続けるコツは?

一番の強みは構図を見いだす力だと思います。
限られた平面の空間のなかに対象物をぎゅっと詰め込み、整理していく方法です。
浮世絵や昔の日本の絵画に学びました。日常の風景を見ても、
隠された構図を見つけ出すゲームをよくしています。
技術を磨く方法は、とにかく日々の仕事で得た絵を描くチャンスに活かしていくことです。
仕事であっても、常に新しい構図などにチャレンジします。そんなことを20年間やってきました。

 

●絵を描く時に使う一番楽しいツールは?

MACとadobe illustratorです。すべてパーツを描きおわり、色や大きさ、線の太さ、ズームなど、
自分が気持ち良いと思う絵になるまで、パカパカ変えていくときが一番楽しいです!

 

●スペシャリゼイション(専門に特化した人)、ジェネライゼイション(満遍なく幅広くできる人)について
どう思いますか?

どちらにも憧れます。もともとジェネライゼイションから始めました。
けれど、日本のイラストレーション界では、なぜかジェネライゼイションよりスペシャリゼイションの方が
上位に思われていたので、何とかある分野のスペシャリストになりたいと思っていました。
けれど、成ってみるとその分野、タッチにすぐに飽きてしまうことに気づきました。
また描くテーマによって、その都度絵柄が変わってしまうのは自然なことだと思います。
尊敬する葛飾北斎は美人画から風景画、広告画から本の挿絵、仏画から春画まで、
あらゆるジャンル、事物を描き、描けないものはないと言われました。
僕もかくありたいと思っています。

 

●最近、影響もしくは魅了されているものは?またそれを作品に取り入れていますか?

100年位昔の日本の幻想小説家「泉鏡花」という作家の作品に、再び魅かれています。
彼の描き出す幻想的な世界は、文化、風俗、人生観など現代の日本人が失ってしまった美しさを持っています。
それでいて、現代にも通用する普遍的なテーマを描いていることに気づきました。
この泉鏡花の世界を、伝統的な日本の絵画の風情を残しつつ、現代的な絵として再生できないかと考え、
三冊の絵本を作りました。「繪草子 龍潭譚」「絵本化鳥」「朱日記」です。

 

●作品製作以外のことで、情熱を注いでいるものはありますか?

僕はイラストレーターと同時に仏教寺院の僧侶でもあります。
今後自分の住んでいる寺院をより良い場所にしていこうと考えています。
まずは宗教行事の無い時間をさまざまなユニークな知人に開放して、
さまざまなイベントを行い、多くの人たちに親しんでもらおうと思っています。
現在定期的に、瞑想会、クロッキー会を開いており、秋からは数学の講座なども行う予定です。

 

●迷信や、宗教作法などで、信じているものはありますか?

前述のように仏教徒なので、仏教を信じています。仏教の中でも浄土教の宗派なので、
阿弥陀仏を信仰し、難しい修行などしなくても、その御名を唱えるだけで、
この世に居ながら仏の世界に生まれることができるという教えです。
簡単に言うと、自分の力におごらず謙虚に自然とともに生きようよ、という考え方です。
特別なことなどしなくても、ハッピーに生きられるという教えを気に入っています。

 

●他の人にも伝えたいことはありますか?

イラストレーションを描くにあたってのアドバイスはありませんが、
ラッキーを手に入れるコツを昔教わったことがあります。
良いものを手に入れたときは、すかさず横の人にそれをパスすること。
そうすれば、すぐにまた良いものが飛び込んでくる。
逆に良いものを自分のところで留めて独り占めしていると、
良いものはどんどん腐りだして悪いものになってしまう。
そんなところには良いものも訪れない。

 

●ご自身のモットー(座右の銘)を教えてください。

小事は気にせず流れる雲のごとし。

 

TAGGED : GAKU NAKAGAWA , CULTURE

2015.08.20

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